「もっとたくさん、できれば半日ほど様子を見させてほしいのです」

「半日か……」

「半日が無理でしたら、数時間……! とにかく、いつもよりもたくさんひかり様のご様子を見ていたいのです」


コンとギンは、私がひとりでひかりの様子を見ていることは知っている。
ふたりには週に一度、一時間ほどしか見せてやっていないが、実は私だけは毎日のように彼女を見ているのだ。
とはいっても、一回に使う時間は数分程度だが、それでもコンにとっては羨ましいことに違いない。


「わかった」

「本当ですか?」

「ああ。ただし、条件がある」

「は、はい……」

「さすがにずっと見ているのは、ひかりに少し申し訳ないからな。ひかりが仕事をしている時間のみ、ということでどうだ?」

「はいっ……!」


コンは瞳をパッと輝かせると、すぐさま飛び上がった。


「ありがとうございます、雨天様! コンは嬉しゅうございます!」


術が解けて狐の姿になったコンは、縁側から庭に走り出し、雪の降る庭をクルクルと走り回った。


「コン、風邪を引くぞ」

「平気です! コンは嬉しくて嬉しくて、ちっとも寒くありませんから!」


大喜びするコンに苦笑を零すと、ギンも瞳を緩めている。
きっと、あんなにも嬉しそうな兄の姿を見られて、ギンも嬉しいのだろう。


ひかりがあるべき場所に帰ってからのコンは、いつも通り明るい笑顔を見せながらもときおり寂しそうな顔をしていた。
こんなにもはしゃぐコンを見たのは、随分と久しぶりだった。
きっと、ギンも安心しているに違いない。


「コン、そろそろ戻ってきなさい。風邪をひいてしまっては、願いを聞いてやれないぞ」

「はーい!」


素直に戻ってきたコンの体は、雪に塗れて真っ白だった。