「……どうした、コン? いつもならすぐに願いを言うだろう」

「あの、雨天様……。今年のお願いは、いつもと違っても構いませんか?」


神妙な面持ちのコンは、どうやら私の予想に反したものを欲しているようだ。


「ああ。構わない。私ができることであればな」

「で、では……」


意を決したようなコンが、私を真っ直ぐ見つめてくる。


「ひかり様のご様子を見させていただきたいのですが……」


一拍置いてコンが口にしたのは、予想だにしない願いだった。


「ひかりの様子なら、週に一度見せてやっているではないか」

「はい。でも、そうではなくてですね……」


今年の夏、この屋敷にやってきた少女が去って、もう四ヶ月ほどだろうか。
ひかりのことを気にかけている私と同様に、コンの彼女への入れ込み様は相当なものだった。


恐らく、私たち三人の中で一番ひかりと過ごした時間が長いからだろう。
彼女は一日の大半をコンと過ごし、コンとともに家事やおつかいに勤しんでいた。


それ故に、ほとんどの家事をずっとひとりでこなしていたコンにとって、ひかりと過ごした日々はあまりにも有意義な時間になったに違いない。
最後に家まで彼女を送り届けたコンが、涙をこらえるギンとは違い、泣き腫らした目で帰ってきたことはよく覚えている。