「それはよかった。なぁ、ギン」

「はい。とても嬉しいです」


にこにこと笑うギンを見たコンが、喜びと嫉妬を同居させたような顔で両手に持ったみたらし団子を頬張る。


普段、料理以外の家事やおつかいは、ほとんどコンが担っている。
私とギンがふたりで台所にいる時間がとても長いため、三人でいてもコンだけ疎外感を抱くこともあるだろう。
そんなことがないように気をつけているつもりだが、この顔を見るにヤキモチが隠せないようだった。


「だが、その味噌汁を作るために必要なカツオや昆布、煮干しは、コンがおつかいに行ってくれるおかげで手に入る。みたらし団子のタレに必要な醤油はもちろん、隠し味の黒糖や水あめはコンが猪俣様のところでいただいてきたものだ」


私の言葉に、コンの顔がみるみるうちに綻んでいく。


「いつもありがとう、コン。コンとギンがいてくれて、私はとても助かっているよ」


満面の笑みになったコンは、頬張っていたみたらし団子を飲み込んで得意げに胸を張った。


「とんでもございません。コンもギンも雨天様の神使にございますから、雨天様のお役に立てることほど光栄なことはございません。家事もおつかいもコンの大切なお役目ですから、これからもなんなりとお申し付けください」


現金なコンの顔は、おかしくなるほど誇らしげだった。
しかし、コンのこういうところが屋敷を明るく照らしてくれる。


コンとギン。
双子といえども、ふたりそれぞれにまったく違った魅力があり、ふたりとも私にとっては可愛い。
唯一無二の、大切な神使なのだ。