夏が終わり、秋が来て、冬を迎えた。
今年の夏はいつもと違い、毎日がとても目まぐるしかった。
振り返ればほんの数日間のことだったのに、何年もの月日を重ねた気さえした日々だった。


ある日突然、嵐のように現れたかと思うと、あっという間にこの屋敷に馴染み、優しい光のような温もりを残して去った人間の少女。
彼女は今日も、どこかでちゃんと笑えているだろうか――。





「雨天様―!」

「どうした、コン」

「今日のお掃除は終わりました。これから猪俣様のところに行ってまいります」

「ご苦労様。今日の甘味はみたらし団子だ。猪俣様によろしく伝えてくれ」

「承知いたしました。それにしても、よい香りですよねぇ。お団子のタレがピカピカのツヤツヤで、とってもおいしそうです」

「あとでみんなで食べよう。ほら、おつかいに行っておいで」

「はい。行ってまいります」


コンは元気よく返事をすると、いつも通りに出かけて行った。


「雨天様、お夕飯はいかがいたしますか」

「そうだな……今夜は鮭を焼こうか。確か、ちょうどよいものがあっただろう」

「では、私がお味噌汁を」

「ああ、頼む。ギンはすっかり出汁を取るのが上手くなったからな。安心して任せられる」

「ありがとうございます」


嬉しそうに笑うギンに、瞳を緩める。
修業の成果が表れていることが自信に繋がっているのだろう。
ギンはコンよりも引っ込み思案なところがあったが、最近は以前にも増してよく笑顔を見せるようになった。