生まれる前から、ふたりで一緒だった。
母のお腹の中に宿ったときよりも、もっともっとずっと前のこと。


神様が私たちに言った。
『ふたり仲良く手を取り合って行きなさい』と。


どこに行けばいいのかわからないと言ったら、神様はにっこりと笑った。


『大丈夫ですよ。ふたりで一緒にいたら、きちんとたどりつけます』


やっぱりわからなかったけれど、隣にいる小さな命と一緒に手を取り合い、真っ直ぐに歩いた。
すると、不思議なことに暖かな場所にたどりついた。


知らない場所だったけれど、不安はなかった。
だって、ふたりで一緒だったから。


柔らかな場所で何日ものときを経て、私たちはこの世に生を受けた。
私はコンと、弟はギンと名付けられた。


私たちが生まれたのは、日本という場所だった。
金沢にあるひがし茶屋街と名付けられている場所から程近くの山の、ずっとずっと奥の方。


優しい母は、ふかふかの毛皮で私たちを包み、いつも一緒にいてくれた。
父は生まれたときからいなかったけれど、母と私と双子のギンがいてくれたからよかった。
ときには腹を空かせ、ひもじい思いをしたけれど、母はいつだっておいしいご飯を持ってきてくれた。


ところがある日、母が病に侵された。
まだ子どもの私やギンではなにもできず、泣くばかりだった。
なんとか一生懸命取ってきた食べ物も、母はとうとう食べられなくなり、私とギンを残してこの世を去った。


『ほら、泣かないで。お母さんがいなくても、ふたりで一緒にいたら大丈夫よ』


最後の力を振り絞るようにして、母は言った。


『コンはお兄ちゃんなんだから、ギンをよく見てあげてね。ギンはたくさんコンを助けてあげてね。ふたりでずっと一緒にいたら大丈夫よ』


嫌だ嫌だと泣いても、とうとう母の息は止まってしまった。