玄関から見る家の中の風景には、さすがに名残惜しさを感じさせられたけれど、深呼吸をひとつしてから口角をキュッと上げた。
少し悩んで、おもむろに口を開く。
「ばいばい、おばあちゃん」
いつも笑顔で見送ってくれたおばあちゃんは、もういない。
金沢に来たばかりの頃はそれがつらくてたまらなかったのに、今はその頃とは違う気持ちでここに立っている私がいた。
外に出て玄関の鍵を掛け、振り返って足を踏み出そうとした時、地面に落ちている白い花が視界に入ってきた。
「スズラン?」
思わずしゃがんで手に取ったけれど、スズランの季節は確か春から初夏だったはず。
おばあちゃんから聞いた知識を思い出して不思議に思いながら辺りを見れば、五メートルほど先の右側に同じような花が落ちていた。
それも手に取ると、さらに先にもう一本。
誰かのイタズラかと思う反面、なにかの道しるべにも思えて、どうしても無視はできなかった。
全部で五本のスズランを見つけたあとで顔を上げると、庭の物置きの前まで来ていた。
私の背丈ほどしかないその扉が、なぜか少しだけ開いている。
きちんと閉じようとしたのに、中でなにかが引っかかっているようで上手く動かせなくて、仕方なく一度扉を開けた。
直後、中から棒のようなものが落ちてきて、私の足元でその身を横たわらせた。
少し悩んで、おもむろに口を開く。
「ばいばい、おばあちゃん」
いつも笑顔で見送ってくれたおばあちゃんは、もういない。
金沢に来たばかりの頃はそれがつらくてたまらなかったのに、今はその頃とは違う気持ちでここに立っている私がいた。
外に出て玄関の鍵を掛け、振り返って足を踏み出そうとした時、地面に落ちている白い花が視界に入ってきた。
「スズラン?」
思わずしゃがんで手に取ったけれど、スズランの季節は確か春から初夏だったはず。
おばあちゃんから聞いた知識を思い出して不思議に思いながら辺りを見れば、五メートルほど先の右側に同じような花が落ちていた。
それも手に取ると、さらに先にもう一本。
誰かのイタズラかと思う反面、なにかの道しるべにも思えて、どうしても無視はできなかった。
全部で五本のスズランを見つけたあとで顔を上げると、庭の物置きの前まで来ていた。
私の背丈ほどしかないその扉が、なぜか少しだけ開いている。
きちんと閉じようとしたのに、中でなにかが引っかかっているようで上手く動かせなくて、仕方なく一度扉を開けた。
直後、中から棒のようなものが落ちてきて、私の足元でその身を横たわらせた。