「今日まで本当にありがとうございました」


深々と頭を下げ、はっきりとした声音で言葉を紡ぐ。
それから、いつもギンくんが座っている方を見た。


「ギンくん、毎日おいしいご飯やおやつを作ってくれて、本当にありがとうございました。私、ギンくんがお料理してる姿を見るのが楽しみだったんだ。これからも、お客様たちのために頑張ってね」


笑顔に感謝を込め、ギンくんの姿を想像すれば、いつものように笑ってくれているような気がした。
コンくんほど話す機会はなかったけれど、努力家のギンくんには感謝と励ましの言葉を伝えておきたかった。


「コンくん、毎日たくさん話せて本当に楽しかったよ。掃除も洗濯もお遣いも、コンくんと一緒にできてよかった。色々教えてくれて本当にありがとうございました。これからも、傷ついたお客様をここに導いてあげてね」


今度はコンくんがいる方を向いて、気持ちを言葉に変えた。
きっと、泣いているんだろうなと思って鼻の奥がツンと痛んだけれど、笑顔だけは崩さなかった。


そして、再び雨天様を見つめ、もう一度頭を下げる。


「雨天様、私をここに置いてくれて、本当にありがとうございました。この二週間は、すごく目まぐるしくて、不思議で、信じられないこともたくさんあったけど……。たくさんのことを得られたと思う」


雨天様は、私の言葉を真っ直ぐな双眸で受け止めてくれていた。