今日はどうして居間じゃないのか、という疑問の答えはすぐにわかった。
今夜のお客様は私だから――だ。
「ひかりは、そこに座りなさい」
「うん」
指差されたのは、一度だけ座ったことがある場所。
お客様がいつも座っている席には、私が初めてここに来た夜にお客様として迎え入れてもらった日以来、座ることはなかった。
正座をすると、膝から下に畳の感触が触れる。
真正面には、雨天様が腰を下ろした。
テーブルの上には四人分の甘味とお茶が用意されているけれど、私の目にはもう雨天様の姿しか見えない。
いつもの場所に座っているはずのコンくんとギンくんの姿を想像すると、胸が詰まるような思いがした。
「ようこそ、我がお茶屋敷へ。今宵の甘味は、上生菓子でございます」
そんな私を見つめた雨天様が、笑顔でそう切り出した。
下ろした視線の先には、淡い緑の上生菓子が漆塗りのような艶やかな黒いお皿の上に載っている。
「そちらは、スズランに見立てたものでございます」
「え?」
よく見ると、淡い緑の上生菓子には、小さな白い花が縦に三つ並んでいる。
少しだけ斜めに並べられているのは、スズランの花が咲いている姿を思い起こさせた。
今夜のお客様は私だから――だ。
「ひかりは、そこに座りなさい」
「うん」
指差されたのは、一度だけ座ったことがある場所。
お客様がいつも座っている席には、私が初めてここに来た夜にお客様として迎え入れてもらった日以来、座ることはなかった。
正座をすると、膝から下に畳の感触が触れる。
真正面には、雨天様が腰を下ろした。
テーブルの上には四人分の甘味とお茶が用意されているけれど、私の目にはもう雨天様の姿しか見えない。
いつもの場所に座っているはずのコンくんとギンくんの姿を想像すると、胸が詰まるような思いがした。
「ようこそ、我がお茶屋敷へ。今宵の甘味は、上生菓子でございます」
そんな私を見つめた雨天様が、笑顔でそう切り出した。
下ろした視線の先には、淡い緑の上生菓子が漆塗りのような艶やかな黒いお皿の上に載っている。
「そちらは、スズランに見立てたものでございます」
「え?」
よく見ると、淡い緑の上生菓子には、小さな白い花が縦に三つ並んでいる。
少しだけ斜めに並べられているのは、スズランの花が咲いている姿を思い起こさせた。