「ああっ、ひかり様! お掃除なんてしていただかなくても! 今日はゆっくりお過ごしください!」


お屋敷に戻ったあと、雨天様はすぐに台所に行ったから、私は荷物を纏めてから借りていた部屋の掃除をしていると、コンくんが慌てたように止めに来た。
心遣いは嬉しいけれど、首を横に振る。


「たぶん今日で最後になるから、ちゃんと綺麗にしていきたいの。雨天様にもコンくんにもギンくんにもたくさんお世話になったのに、私にできるのはこれくらいしかないんだもん」

「ひかり様……」


笑顔で返した私に、コンくんはグッと言葉に詰まったような顔をして、寂しさを浮かばせた。
私までつられてしまうから、そんな顔をしないでほしい。


「でしたら、コンもお手伝いいたします! いつものようにふたりでいたしましょう!」


そんな私の気持ちが伝わったのか、コンくんは潤んだ瞳を手の甲でゴシゴシを拭って明るく笑った。
私も涙をこらえて頷き、好意に甘えることにした。


「……ギンくんはどうしてるの?」

「お台所で甘味を作っております。今宵はひかり様のためにとびきりおいしいものをご用意したいと、張り切っておりましたよ」

「そっか……」


もうギンくんのことが見えない私に、ギンくんもコンくんと同じように優しくしてくれるなんて……。
嬉しいけれど、同じくらい申し訳ないと思う。