「雨天様と一度会っていたから、私はここに来られたんだね」

「ああ、そのようだ」


大きく頷いて肯定した雨天様は、私が手にしている傘に視線を遣ったあと、そのまま続けた。


「子どもの目に神様や神使の姿が見えるのはそれほど珍しいことではないが、声が聞こえる者はそれよりも遥かに少ない。だが、ひかりには私の声が聞こえた」

「うん。雨天様のおかげで、おばあちゃんに会えたよ。でも、どうしておばあちゃんの居場所までわかったの?」

「家族や縁がある者同士は、我々には結びついて見えるのだ。簡単に言えば、ひかりとおばあ様のそれぞれの魂が微かな光の糸のようなもので繋がっているように見え、それはお互いへの愛情が深ければ深いほど明確になる」


微笑む雨天様が、「それでも、とても淡く微かなものだがな」と補足し、私を見つめた。


「だから、おばあ様の姿が見えなくても、近くにいる気配を感じたのだ。まさか、ひかりが傘を放り出していくとは思ってもみなかったが」

「きっと、おばあちゃんを探すことに必死だったから……。でも、そのおかげでおばあちゃんに会えたし、十五年も経ったけど雨天様にもまた会えたんだよね」

「そのようだな」


共感の言葉とともに笑みが零され、綺麗な双眸が優しく細められる。
私も相槌を打つように首を振り、懐かしさでいっぱいになりながら再び傘を見つめた。