「ひかりは、この傘をどうしたのか覚えているか?」

「うん……。ずっと忘れてたけど、今ちゃんと思い出した」


この傘は、おばあちゃんに買ってもらったもの。
おばあちゃん家に泊まりに来た時にお気に入りの傘が壊れてしまい、おばあちゃんは泣いている私に傘を買いに行くことを提案してくれた。


スイートピーの折り畳み傘を買った時のように、ふたりで随分と悩んで、いくつもの傘を広げた。
そして、何本目かの傘を広げた時、おばあちゃんが満面の笑みになった。


『まぁ、ひかりちゃん! 見て! この傘、とっても素敵よ! まるで青空にお花畑が広がっているみたい。雨の日が楽しくなっちゃうわね!』


青空のような水色に、可愛らしいスズラン。
まるで空から白い花が降って来るようなデザインとおばあちゃんの言葉で、私はすぐにこの傘が欲しくなってしまった。


『これがいい! ひかり、これにする!』

『あら、そう?』

『だって、雨の日でも楽しくなるんでしょ?』

『えぇ、そうね。じゃあ、これにしちゃいましょう』

『うん! ひかり、ずっと大切にするね!』


嬉しくてたまらなかった私は、とびきりの笑顔でおばあちゃんにそう言った。
おばあちゃんはとても嬉しそうにしていて、そのあとで変な場所に名前を書かれたことなんてすぐに気にならなくなるくらい、お気に入りになった。