「雨宿りしていくか?」

「え?」

「これも縁だ。いや、巡り合わせというべきか……。どちらにしても、コンの声が聞こえたのならお前は屋敷に認められた、ということになる」


コンの声? 屋敷に認められたってなに?


「はぁ……」


なんの話をされているのかわからない私は、答えるよりも先に気のない声を漏らしてしまった。
無意識で取った態度だけれど、ハッとして慌てて口元に手を当てる。


だけど、目の前にいる男性は特に私の態度を気にする素振りはない。
そして、おもむろに口を開いた。


「どうする? 雨宿りしても、このまま帰っても、お前の自由だ」


選択肢を与えられたのに、私の心は不思議とひとつの答えしか見ていなかったような気がする。
理由はわからないけれど、この銀髪の男性が気になったからとか、知らない声の正体が知りたかったからとか、たぶんそういうことじゃなかったと思う。

ただ、〝ここにいたい〟と、心が訴えかけてきたような気がしたから。


「雨宿り、させてください」


控えめに自分自身の声が落ちた時、雨がやんでいたことには気づかない振りをした。