「まぁよい。時にはそのような縁があってもよい、と思うことにしよう」

「お屋敷を守る神様がそんな感じでいいの?」

「……今回は特別だ」

「じゃあ、雨天様たちに会えた私は、他のお客様よりもラッキーだったのかもしれないね」


満面の笑みで言えば、雨天様が柔らかな面持ちで頷いた。
そして、私の頭をポンと撫でた。


「その笑顔を忘れるでないぞ。ひかりは笑っている方が可愛いからな」


なんだかキザな神様だ。
神様じゃなければうっかり恋に堕ちていたかもしれないけれど、私は照れ隠しで「善処する」とだけ返した。


「……ああ、傘をしまい忘れていたな」


私の気持ちを見透かすように笑った雨天様が、不意に視線を縁側に続く道へと遣った。
そこには、複数の傘が並べられていた。


「なんだ、コンの奴。全部干しているのか」


雨天様はひとり言のように言ってから、そちらに向かい、地面に置かれている傘を一本持った。
広げてある傘を畳むのを見て、私も同じように傘を手に取る。


微笑んだ雨天様に笑みを返し、ふたりで傘を片付けていった。