そういえば、雨天様は前に来た人間のお客様が天寿を全うしたことを知っていた。
その時は深く考えなかったけれど、つまりそういうこと。


私からは見えなくても、雨天様からは私のことが見えるのは、少しだけ不公平だと思ってしまった。
それでも、心の中にわずかに残っていた不安が溶けていく。


「じゃあ、ますます頑張らないといけないね。雨天様やコンくんやギンくんが、心配しないように」

「そうしてもらえると、こちらとしては気を揉む必要がなくてありがたいな」


おどけて見せると、雨天様の表情に安堵が混じった。
私が思っているよりもずっと、雨天様は私のことを心配してくれているのかもしれない。


「だが、いつもいつも頑張る必要はないのだぞ」

「たまには息抜きしろってこと?」

「ああ。そもそも、人間はなんでもかんでも頑張り過ぎだからな。長い人生を生きるのだから、毎日午後に茶を飲む時間を持つくらいでちょうどよい」

「でも、忙しい時にお茶なんて飲めないんだよ」

「だったら、なにかひとつ後回しにすればよいではないか」

「えー……」

「えー、ではない。神様がこう言っておるのだぞ?」


フン、と鼻を鳴らすように言い切った雨天様に、思わず噴き出してしまう。
だけどきっと、雨天様の言う通りだと思った――。