「もう子どもじゃないのに、なんだか情けないよね」


笑っていたいのに、負の感情に負けてしまいそう。
そんな気持ちを隠して乾いた笑いを上げた私を、雨天様が「ひかり」と静かに呼んだ。


「目標がないことは、別に悪いことではない」


きっぱりと言い切られて、少しだけ戸惑った。
共感できないせいで、微妙な顔になっていたと思う。


だって、現実問題、私は来年に就活を控えた身。
夢や目標とまではいかなくても、自分自身のやりたいことくらいはわかっていなければ、就活にも影響するだろうから。


「だいたい、大きなものだけを目標と決めつけるのは、いささか浅はかだ。大きくたって小さくたって、自分が頑張るきっかけになるのなら目標であろう」


それでも、雨天様の声には素直に耳を傾けたくなる。
明確な理由を説明することはできないけれど、今日までの日々が自然とそうさせていたのかもしれない。


「たとえば、今日の仕事を頑張ろうと思うことだって、立派な目標だ。それを達成すれば、褒美に大福のひとつでも食えばよかろう」

「でも……普段はそれでよくても、夢とかちゃんとした目標がないとやっぱりダメだと思う。だって、そういうものがないと、将来のことなんて決められない気がするもん……」


日々の目標は簡単なものでもいいのかもしれないけれど、自分の将来を決めるにはあまりにも心許ない。
納得できなくてため息を漏らすと、雨天様がフッと瞳を細めた。