「兄弟の出来はよくて、ふたりとも超一流企業に勤めてて、両親はいつも自慢してた。でも、私だけ外で褒められることはほとんどなかったんだ」


家の中では『頑張ったね』と言ってくれるけれど、外では褒められた記憶はない。
親戚からは兄や姉と比較されることも多くて、いつも息が苦しかった。


「でもね、おばあちゃんだけは私をたくさん褒めてくれたんだ」


『宿題をちゃんとして偉いわね』
『好き嫌いせずに食べてすごいじゃない』
『ひかりちゃんがお手伝いしてくれて助かるわ』


どれもこれも、取るに足らないようなことばかり。
だけど、些細なことでも褒めてくれるおばあちゃんだけは、私のことをちゃんと見てくれていると思えて、物心ついた時には心の拠り所になっていた。


「だから、長期休みになるとおばあちゃん家で過ごせるのが嬉しくて、いつも金沢に来てた」


両親の期待が薄れていく中で、おばあちゃんだけは最後に会った時ですら私のことを褒めてくれた。
本当に些細なことばかりだったけれど、大学生になっても私のことをちゃんと見てくれるおばあちゃんに何度救ってもらったかわからない。


「おばあちゃんとの時間が、私の一番の心の支えみたいなものだったと思う」


とても思いやりがあって、たくさん褒めてくれて、いつも笑顔で明るくて。
いつからか、私はおばあちゃんみたいな人になりたいと思うようになっていた。