「……たぁた、きまっし」
「え?」
考えるよりも先に口にしていたのは、聞いたばかりの不思議な言葉。
耳慣れない声に呼ばれたような気がしたなんて言えば、きっと白い目を向けられるに決まっている。
そう思うのに、唇は勝手に開いていた。
「そう、言われて……。なんだか、気になってしまって……」
もとはと言えば、花街の名残を残したような茶屋街の賑やかな声から逃げたくて路地に入ったら迷った、というだけ。
だけど、それとは違う理由を口にしたのは、そう答えるのが正解だ、と直感したからなのかもしれない。
「……コンか。いや、それよりも娘。お前はその声が聞こえたのだな」
コクリ、と小さく頷く。
それだけですべてを悟ったように、男性はため息をついた。
「まったく……。あのいたずら狐め、なにも人間まで呼ばなくてもよかろう」
変な話し方の男性は、まるで中二病をこじらせた大人みたい。
そう思うのに不思議と不安や恐怖心はなくて、むしろさっきまでよりも心は落ち着いている。
もっと言えば、金沢に来てから初めて安堵感を持てたような気がしていた。
「え?」
考えるよりも先に口にしていたのは、聞いたばかりの不思議な言葉。
耳慣れない声に呼ばれたような気がしたなんて言えば、きっと白い目を向けられるに決まっている。
そう思うのに、唇は勝手に開いていた。
「そう、言われて……。なんだか、気になってしまって……」
もとはと言えば、花街の名残を残したような茶屋街の賑やかな声から逃げたくて路地に入ったら迷った、というだけ。
だけど、それとは違う理由を口にしたのは、そう答えるのが正解だ、と直感したからなのかもしれない。
「……コンか。いや、それよりも娘。お前はその声が聞こえたのだな」
コクリ、と小さく頷く。
それだけですべてを悟ったように、男性はため息をついた。
「まったく……。あのいたずら狐め、なにも人間まで呼ばなくてもよかろう」
変な話し方の男性は、まるで中二病をこじらせた大人みたい。
そう思うのに不思議と不安や恐怖心はなくて、むしろさっきまでよりも心は落ち着いている。
もっと言えば、金沢に来てから初めて安堵感を持てたような気がしていた。