「今宵の甘味は、ひかりのために作ろう」

「それまで、ここにいられるのかな……」

「もしいられなかったとしても、ひかりの心が癒えたのならそれでよいのだよ」


雨天様が紡いだ答えに、思わず眉を下げてしまった。
私の心は、本当に癒えたのだろうか……。


確かに、ここで過ごした日々は驚きと戸惑いの連続で、それでいて毎日がとても楽しくて、悲しみに暮れている暇なんてなかった。
お客様たちがそれぞれに抱えていた心の傷に触れて、色々と考えることができたとも思う。


そのおかげで、おばあちゃんのことを思い出す時には、寂しさを抱いても悲しみを強く感じることは減っていったけれど……。
心の傷が本当に癒えたのかと自身に問えば、しっかりと頷くことはできないような気がした。


「ひかり、心配することはない」

「でも……」

「私たちの姿が見えなくなるということは、そういうことなのだ」

「雨天様……」


不安を溶かすように、雨天様が優しく微笑んでいる。
その笑顔はとても好きだし、雨天様の言葉を信じることはできるのに、寂しさを上手く拭えない。


「少し庭に出ようか」


雨天様は柔和な笑みを浮かべたまま、私を促した。