「来世もあなたに幸福の縁がありますように」


決まって紡がれる、幸せを願う言葉。
いつか私にも、雨天様は同じセリフをくれるのだろうか。


「ひかり、大丈夫か?」


そんなことを思っていると、雨天様が私の顔を覗き込むようにしていた。
慌てて涙塗れの顔を手の甲で拭い、なんとか笑って見せる。


「うん、平気」

「そうか。だが、今夜は少し疲れただろう。早く布団に入るとよい」


頷いて「ありがとう」と言いながら、私はあとどのくらいここにいられるのだろうと考えた。
明日か明後日か、もしかしたら今夜には帰ってしまうこともあるのかもしれない。


この場所を、雨天様を。コンくんと、ギンくんを。
忘れてしまう日が来るのはとても寂しいけれど、だからこそ今は一秒でもたくさん笑っていたい。


だって、私の記憶が消えてしまっても、みんなは私のことを覚えていてくれるはずだから。
一秒でもたくさん笑って、笑顔をたくさん残して、とびきりの感謝を込めて『ありがとう』という言葉を残したい。


だから、いつか訪れる別離の時を思ってどんなに深い寂しさを抱いたとしても、できるだけ笑っていよう。
優しい神様たちとの別れが来る、その日まで――。