「こちらが今日の甘味でございます」
「今日はなんだ?」
「塩大福でございます」
「おぉ、それはいいな! 夏にぴったりだ!」
コンくんに訊きながら風呂敷の中身を確認した猪俣さんが、パッと笑顔になった。
今日一番の笑顔になったところを見ると、コンくんと同じように塩大福も好きみたい。
「ん? もうひとつ容れ物があるな」
「そちらは、奥様がお好きな豆大福でございます。どちらもおふたりで召し上がっていただけるよう、ふたつずつご用意させていただきました」
「ほう、気が利くじゃないか。あいつも喜ぶよ。豆大福は滅多に食えないからなぁ」
「猪俣様にはいつもお世話になっているからという、雨天様のお気持ちでございます。それと、豆大福はよい黒豆が手に入りにくいので滅多に作りませんが、奥様がご注文くださればいつでもお作りします、とご伝言です」
「ありがとうな」
フッと寂しげな顔をした猪俣さんを見ていると、猪俣さんは「うちの奴、ちょっと入院してるんだ」と微笑した。
「え? 大丈夫なんですか?」
思わず尋ねた私と、帰り支度をしていたコンくんは、お互いの顔を見合わせてしまう。
猪俣さんの奥さんとは一度しか話したことがないけれど、とても優しくて穏やかな人だから、私はその一度会っただけでとても好きになった。
「今日はなんだ?」
「塩大福でございます」
「おぉ、それはいいな! 夏にぴったりだ!」
コンくんに訊きながら風呂敷の中身を確認した猪俣さんが、パッと笑顔になった。
今日一番の笑顔になったところを見ると、コンくんと同じように塩大福も好きみたい。
「ん? もうひとつ容れ物があるな」
「そちらは、奥様がお好きな豆大福でございます。どちらもおふたりで召し上がっていただけるよう、ふたつずつご用意させていただきました」
「ほう、気が利くじゃないか。あいつも喜ぶよ。豆大福は滅多に食えないからなぁ」
「猪俣様にはいつもお世話になっているからという、雨天様のお気持ちでございます。それと、豆大福はよい黒豆が手に入りにくいので滅多に作りませんが、奥様がご注文くださればいつでもお作りします、とご伝言です」
「ありがとうな」
フッと寂しげな顔をした猪俣さんを見ていると、猪俣さんは「うちの奴、ちょっと入院してるんだ」と微笑した。
「え? 大丈夫なんですか?」
思わず尋ねた私と、帰り支度をしていたコンくんは、お互いの顔を見合わせてしまう。
猪俣さんの奥さんとは一度しか話したことがないけれど、とても優しくて穏やかな人だから、私はその一度会っただけでとても好きになった。