「おう、コン。またデートかい」

「お遣いにございます」

「相変わらずお堅いなぁ」


近頃は、猪俣さんのところに行くと、決まって猪俣さんとコンくんがこんなやり取りをする。
同じシーンの繰り返しに、私は今日も小さく笑った。


「本当は満更じゃないんだろう?」

「猪俣様はしつこいですよ」


からかう猪俣さんと、決まったセリフを返すコンくんと、そんなふたりを見てクスクスと笑う私。
三人の立ち位置が、すっかり定着してしまっている。


「本日は、小豆ともち米をお願いしておりましたが……」

「ああ、ちゃんと仕入れてある。小豆はいつもよりちょっといいものが手に入ったぞ」

「ありがとうございます」

「次の注文は?」

「明後日までに、和三盆をご用意いただけますか? それと、いつもの飴屋さんの水あめも」

「おいおい、和三盆は早めに言ってくれって言ってるだろう?」

「申し訳ございません。私も出かけに言いつけられたものですから」


猪俣さんは盛大なため息をつきながらも、承諾してくれる。
これも、もうすっかり見慣れた光景だ。