「妖にも幽霊にも、いい者も悪い者もいる。だが、悪い者が根っからの悪かと言えば、私はそうではないと思っている」


まるで叱られた子どものような気持ちでいる私に耳には、雨天様の優しい声が雨音とともにしっかりと届く。
決して叱られているわけじゃないけれど、自然と反省の念を抱いていた。


「善か悪か、根っからの悪か。人間にも色々な者がいるように、妖や幽霊も同じなのだ。ついでに言えば、神様もな」


そう言っておどけたように笑った雨天様に、思わず視線を上げていた。
雨天様は、場の空気を和ませようとしてくれたのかもしれないけれど、悪い神様なんているのだろうか。


その真意が気になったけれど、今はその疑問を解消するよりも、言わなければいけないことがある。
少し緊張していることを隠すように息を小さく吐き、視線を逸らさないように努めて、おもむろに開いた唇で謝罪を紡いだ。


「ごめんなさい……」

「なぜ謝る?」

「だって……」


そのあとに続くセリフを、上手く声にすることができなかった。
なにが悪かったのかも、自身の浅慮さもわかっているのに、どれからどんな風に説明すればいいのか思考が働いてくれなかったから。


それなのに、程なくしてフッと小さく笑った雨天様は、私の頭をポンポンと撫でた。