ひがし茶屋街に来たことは、何度もあった。
時代劇で目にするような情緒溢れる古い街並みは、道行く人たちとはアンバランスで、その景観だけが切り取られたように〝古き良き美しさ〟を醸し出している。
おばあちゃんは、ここが好きだと言っていた。
おじいちゃんも好きだった場所のようで、おばあちゃんとここに来ると、決まっておじいちゃんとふたりで来た時のことを話してくれた。
なんてことはない他愛のない話だったけれど、お茶屋街の中にいながら聞く昔話から想像を膨らませるのは、なんだか胸が弾むような気がした。
独特の古い街並みを眺め、お茶やスイーツを楽しみ、昔話に耳を傾けることは、金沢に来る楽しみのひとつでもあった。
でも、夜ってこんなに雰囲気が違うんだ……。
何度も見たことがある格子戸の連なる景色は、夜の帳が下りているというだけでまったく違うものに見える。
いっそ、初めて来たような気さえして、また心細さが蘇ってきた。
雨に濡れる石畳は街灯に照らされて光り、花街の名残を色濃く残していることを語る代わりにどこからか三味線の音が聞こえてくる。
あてもなく歩きながら、その音色をぼんやりと聞いていた。
お店の前にいる芸子さんやお客さんたちは笑っていて、まるで私とは住む世界が違うみたい。
笑い合う姿はとても幸せそうで、ひとりぼっちで歩いている私だけが孤独を抱えているように見えた。
楽しそうな姿を視界から消すように、人通りの少ない方へと足が向く。
気がつけば、知らない路地に入ってしまっていた。
時代劇で目にするような情緒溢れる古い街並みは、道行く人たちとはアンバランスで、その景観だけが切り取られたように〝古き良き美しさ〟を醸し出している。
おばあちゃんは、ここが好きだと言っていた。
おじいちゃんも好きだった場所のようで、おばあちゃんとここに来ると、決まっておじいちゃんとふたりで来た時のことを話してくれた。
なんてことはない他愛のない話だったけれど、お茶屋街の中にいながら聞く昔話から想像を膨らませるのは、なんだか胸が弾むような気がした。
独特の古い街並みを眺め、お茶やスイーツを楽しみ、昔話に耳を傾けることは、金沢に来る楽しみのひとつでもあった。
でも、夜ってこんなに雰囲気が違うんだ……。
何度も見たことがある格子戸の連なる景色は、夜の帳が下りているというだけでまったく違うものに見える。
いっそ、初めて来たような気さえして、また心細さが蘇ってきた。
雨に濡れる石畳は街灯に照らされて光り、花街の名残を色濃く残していることを語る代わりにどこからか三味線の音が聞こえてくる。
あてもなく歩きながら、その音色をぼんやりと聞いていた。
お店の前にいる芸子さんやお客さんたちは笑っていて、まるで私とは住む世界が違うみたい。
笑い合う姿はとても幸せそうで、ひとりぼっちで歩いている私だけが孤独を抱えているように見えた。
楽しそうな姿を視界から消すように、人通りの少ない方へと足が向く。
気がつけば、知らない路地に入ってしまっていた。