「そりゃそうだよね。神様が作ってるんだから、超秘伝のレシピとかなんだろうし、ギンくんだって二百年くらい修行を続けてるんだもんね」


アハハッと笑ったのは、心の中にある気持ちをごまかすため。
納得はできていても、おばあちゃんの味に似ているような気がしたから、できればレシピを教えてもらいたかった。


「いや、そういうことではない。同じように作れるようになるにはそれ相応の修業が必要だが、もし仮にそれを経て作れたとしても、ひかりが帰る時には忘れてしまう」

「え?」


あ、そっか……。


首を傾げた直後にハッとすると、雨天様が困ったような面持ちを見せた。
そこに、微かな笑みが乗せられる。


「ひかりは、いずれあるべき場所に帰らなくてはいけない。その時になればすべての記憶が消え、ここでの日々を思い出すことはない」


困り顔で微笑む雨天様の声は、心に寄り添うように優しかった。
それはまるで、私を傷つけないようにするために思えた。


最初から聞かされていた決まり事を話すだけなのに、私を労わるような声音で紡いでくれた雨天様はとても優しくて……。
だけど、たった数日でここにいることが当たり前になりつつあった私を、同じくらいの厳しさでそっとたしなめた。