「……そうか。この作り方に辿り着くまでに、随分と苦労したのだが、ひかりのおばあ様は料理の腕がよかったのだな」

「えっと、うん……。確かに、おばあちゃんの料理はどれもおいしかったよ。でも、小豆の味は似てる気がするっていうだけで、雨天様が作った小豆の方がおいしいと思う」


おばあちゃんは長生きしたけれど、雨天様と比べれば何百年どころじゃないほどの差がある。
その間ずっと、甘味作りをして来た雨天様にとって、『おばあちゃんが作ったものと似ている』と言われたら複雑な気持ちになるだろう。


「あの、本当だよ?」


それが一瞬戸惑った理由だったのだけれど、結局口にしてしまった私は、慰めにもならない言葉を続けることしかできない。
だけど、雨天様の小豆の方がおいしいと言ったのは、嘘なんかじゃなかった。


「別に気を遣わなくてもよい。ひかりが言いたいことは伝わっておる」

「心を読んだの?」

「読まなくてもわかる」


苦笑した雨天様は、「本当だ」と付け足した。
私はその言葉を信じると言う代わりに、小さく首を縦に振る。


「だが、作り方を教えても、ひかりには作れない」


返って来た答えに落ち込みかけたけれど、すぐにどこかで納得した私がいた。