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翌日から、私はコンくんに教えてもらいながら、お屋敷内の家事を手伝うことになった。
広いお屋敷のほとんどの家事をひとりで任されているコンくんは、ベテラン主婦さながらの働きで次々と家事をこなしていく。


私がお風呂掃除を終える頃には、コンくんはトイレや客間を始め、各々の部屋の掃除まで済ませてしまっていた。
せめて居間の掃除くらいは私がひとりでしようと思ったのに、結局はコンくんが手伝ってくれ、そのまま玄関や門の周辺の掃除もふたりですることになった。


「あんまり役に立てなくて、ごめんね」

「そんなことはございません。ひかり様のおかげで、コンはとても助かりました」

「でも、結局私がひとりでやったのって、お風呂掃除だけだよ」

「はい。でも、コンはとても嬉しかったのです」


言葉以上に嬉しそうに見える顔が、私に向けられる。
なにがそんなに喜んでもらえたのかわからずにいると、コンくんがほんの少しだけ眉を下げた。


「コンが猪俣様のところへ行ったりお掃除をしたりしている間、いつも雨天様とギンは仕込みをしております。コンは自分自身のお役目を果たすことに誇りを持っておりますが、雨天様と作業ができるギンとは違い、コンはいつもだいたいひとりだったので、今日はひかり様と一緒にお掃除ができてとても嬉しかったのです」


少しだけ照れたような表情で語られた、可愛い本音。
たいして役に立てなかった私のことをそんな風に思ってもらえて、意図せずにくすぐったいような気持ちが込み上げ、笑顔にならずにはいられなかった。