この日食べた栗羊羹は、とてもおいしかった。
これまでにここで食べたものは、甘味に限らずすべておいしかったから、最初からとても期待していたのだけれど、やっぱり想像以上の味だった。


棒状の羊羹を切ると、断面には惜しげもないほどの栗がひしめき合っていて、その黄金色に目を見張った。
ツヤツヤの羊羹は口に入れるとプルンと舌の上を滑り、小豆と栗の優しい甘さを感じさせながら溶けるように崩れた。


栗は、しっかりとした存在感を放ちながらも、決して羊羹の邪魔はしない。
ギンくんいわく、食感まで考え尽くされているらしく、思わず大切に噛みしめるように味わってしまった。


「このお茶と、また合うんだよねぇ」

「お茶はコンが淹れたのですよ!」


栗羊羹ばかり褒めていた私が湯呑みを置くと、すかさずコンくんが満面の笑みになった。
二百歳を過ぎていても、こういう可愛らしいところはやっぱり子どものように見える。


「あの……ここにいる間、私にもなにかさせてほしいんだけど」

「ふむ。まぁそれもよかろう。だが、おもてなしをさせるわけにはいかないから、家事程度のことしか任せられないが……」

「うん。じゃあ、私が家事をするよ」

「では、コンに色々と教えてもらうとよい。コン、よろしく頼むぞ」

「もちろんでございます!」

雨天様の言葉に、コンくんが大きく頷いた。