「別に、それでもよいではないか。ひかりは、その言葉に共感したからこそ、私に教えてくれたのだろう」

「もちろんそうだよ……。でも――」

「それなら、私にとっては〝ひかりがくれた言葉〟だ」


陽だまりのように穏やかな声で紡がれた、優しい言葉。
その温もりを心で感じた直後、なぜか鼻の奥がツンと痛んだ。


「だから、私はひかりに感謝するよ」


さらにそんな風に言われて、油断すれば泣いてしまいそうになった。
雨天様はきっと、私が泣いても受け止めてくれるだろうけれど、今は泣いてしまうのが勿体なく思えて、必死に笑みを携える。


「私ね、雨は嫌いじゃないよ。これもおばあちゃんのおかげなんだけど、おばあちゃんは雨が好きだったから、雨の日には喜んでるんじゃないかと思うんだ」

「そうか。それなら、私が降らせる雨も捨てたものではないな」


空を仰いだ双眸が、ゆっくりと緩められていく。
再び降り出したばかりだった雨は、そろそろやむ気配を漂わせているような気がした。


「コンたちが心配するから、そろそろ屋敷へ戻った方がよいな。続きは、また明日にでも案内してやろう」

「うん」

その予想は当たっていて、雨天様と一緒にお屋敷の玄関に戻る途中で傘は必要なくなった。
まだ太陽は見えそうにないけれど、閉じた傘の分以上に視界が晴れた――。