「見て。この傘、スイートピーがデザインされてるの」


再び広げた傘を、雨天様にもよく見えるように高く上げた。
私たちの頭上では、まるでカラフルな花弁が躍っているみたいで、おばあちゃんの言葉通りになったことに自然と明るい笑みが零れていた。


「空は曇ってるけど、まるで空から花びらが降ってくるみたいじゃない? 雨の日の特権だよね」


晴雨兼用だけれど、そこはご愛敬。
それに、私は雨の日にしかこの傘を使っていないから、別に嘘はついていない。


「……ああ、確かにまるで花びらが舞うようだな」


じっと傘を見つめていた雨天様が、おもむろに私に顔を向けた。
強い意志を持つ真っ直ぐな瞳は、柔らかく緩められている。


「ひかりは、とても素敵な感覚を持っているのだな。豊かな感受性は、心を豊かにする。そういう感覚をずっと大切にするとよい」

「あ、えっと……」

「うん?」

「実は……さっきのあれは、おばあちゃんのセリフなの。だから、私の言葉はただの受け売り」


褒めてもらえたことに喜ぶよりも申し訳なくなって、自嘲混じりの声音で白状し、曖昧に笑う。
すると、雨天様はふわりと破顔した。