楽園が、僕らを待っている。


「……だったら、今からでも見て見ぬ振りしなければいい! 独りではその子やあるいは他の子どもを救えないというなら、俺を頼ってください!! 独りでできないなら二人で、二人でできないなら、明希も入れて三人で。それでもできないなら、妹や弟にだって頼ればいいじゃないですか!!」
 幸味夜さんの手を握って、俺は叫んだ。

「俺は幸味夜さんがヒーローだって信じてます。たとえ、一度ヒーローになり損ねたことがあるとしても」
 こんな綺麗ごとみたいな言葉で動いてくれるのなら、動いてほしい。
 俺みたいに、その子が幸味夜さんに救われて欲しい……。

「蓮……」
「幸味夜さん、今日言われた言葉、そっくりそのままお返しします。泣きたいなら泣いてください、幸味夜さん。俺はこの命尽きるまで、幸味夜さんのそばにいます」
 もう片方の手を幸味夜さんの背中に回し、俺は幸味夜さんに忠誠を誓った。
 この人を信じよう。たとえそれで捨てられたとしても、俺は構わない。俺には、失うものなんて、何一つないんだから。
「……ええ。ありがとうっ!」
 俺は幸味夜さんの瞳からこぼれた涙を拭い、幸味夜さんをさらに強く抱きしめた。

 もう迷うまでもない。俺はたとえどんなことがあっても、この人のそばにいたい。この誰よりも真っ直ぐな人の隣で、世界を知っていきたい……。たとえこの世界が、光のない地獄の業火に覆われていようとも。たとえ、いつか道端に捨てられるハメになろうとも。