「……そんなっ!」
余りの酷さに胸がはちきれそうになって、僕はか細い悲鳴を絞り上げた。
「蓮、今ならまだ止めない。ここから逃げて普通に暮らしたいと思うなら、好きにすればいい。君にはまだチャンスがある。でも、もし少しでもそうじゃないと思うなら、……私と一緒に、生きて欲しい」
「……なめないで下さい、幸味夜さん。僕……いや、……俺は貴方のそばにいます。たとえそれで、死ぬことになったしても」
「……蓮」
幸味夜さんは、驚いたように目を見開いて、俺を見た。
僕って言ってきたのは、自分が弱くて、無力だと知ってたからだ。俺なんてカッコつけた言い方で呼ぶ価値なんて、自分にはないと思っていた。でも幸味夜さんがそうじゃないって、俺に一億円の価値があるっていうなら、もう、そんなのはやめよう。
「……俺、もし幸味夜さん拾われてなかったら、あの日、幸味夜さんの言う通り、死んでたと思います。幸味夜さんのそばにいる以外、もう俺に生きる道なんてないんですよ」
「そんなこと……」
「そんなことあるんです。俺、親もろくな友達もいませんから」
“いない”としか言えなかった。あんな酷い父親がいて、そのせいでろくに学校にも通えなくて、誰一人として友達がいなかったことなんて、話せるハズもない。
「それに、最初に俺を買い取りたいっていたのは幸味夜さんなんですから。飽きてゴミみたいに捨ててやりたくなるその日まで、そばに置いといてくださいよ」
「蓮……」
「捨てたくなんかならないよ。君がここを出るって言わない限りは、永遠に。いや……たとえそういっても、捨てたくなんか絶対にならない」
俺の頭を撫でて、幸味夜さんは言った。
「……はい」
俺はそれにしっかりと頷きながら、心の中で、幸味夜さんに謝った。
……ごめんなさい幸味夜さん。俺にはやっぱり、そんな綺麗事みたいな言葉は、信じられません。たとえそれが、本当に嘘じゃないとしても。



