楽園が、僕らを待っている。

 
 治療が終わると、僕は窓から照り付けてきた朝日を数年ぶりに眩しいと感じて、目を覚ました。

「気が付いた? 蓮」
 それからすぐに僕は、透き通るような金色の髪に、赤メッシュを所々にインパクトとしていれた女の人と目が合った。

「……さ……あ……や……さん?」
「うん、幸味夜だよ!!」
 叫ぶようにそう言うと、幸味夜さんは、ベッドにいた俺を勢いよく抱きしめた。
「……髪色、すごいですね」
「アハハ、随分今更だね!!」
 声を上げて、幸味夜さんは泣きながら笑った。

「ありがとうございます、えっと……」
 色彩感覚が戻った僕は、目の前にいた茶髪の髪をした人に、慌てて礼を言った。
 そして、その人の名前を呼ぼうとして、僕は言葉に詰まった。
「凛だ。また来てくれよ兄ちゃん。もちろん、嬢ちゃんも! うちは子供や大人の治療もやってるからな、何かあったらいつでも来いよ!!」

 すると、凛さんは察してくれたのか、そういって、快くよく笑ってくれた。

「はい!」「ええ!!」
 僕と幸味夜さんは、その声に、元気よく頷いた。

「あっ、そーだ。これ、返しとくね。君をベッドまで運んでた時に、預からせてもらってたんだ。財布も預かってるから、必要になったら言ってね? これからは、これで沢山の色鮮やかな写真を撮るんだよ? さっ、行こう。――君に、私の世界を案内してあげる!!」

 幸味夜さんは店を出ると、大層滑らかな口調でそう言い、ポケットから僕のスマフォを出した。そして、それを僕にさっと手渡すと、ぱあっと花が咲いたみたいに、綺麗に笑った。
「はいっ!」
 僕はそんな上機嫌な幸味夜さんを見ながら、元気よく頷いた。
 それから僕は、文字通り、幸味夜さんにいろんなところに連れてってもらった。
 まず初めに連れてってもらったのは、服屋だった。
 ピンク、黄色、青と、様々な色をした服に、僕は一瞬で目を奪われた。
「えっ! これが、僕ですか……?」
 しかし、僕はそれ以上に、幸味夜さんに連れてこられた試着室の鏡に映っていた自分に、悪い意味で目を奪われた。