楽園が、僕らを待っている。


「いらっしゃいお嬢ちゃん! どんな目が欲しいんだい?」
 幸味夜さんと目が合うと、店の奥にいた商人は、上機嫌にそう言い放った。
「この子に似合う瞳を頂戴。釣りはいらないわ」
 トランクケースの中から二十万を出すと、幸味夜さんは商人に近づき、それを何でもないように扱って、平然と商人に差し出した。

「嬢ちゃん、こりゃあ大金じゃないか!! よし、特別にうちの最高級の瞳をやろう」

 そう言って商人が持ってきた瓶の中に入っていたのは、薄い黒のような色をした瞳だった。

「これは人が作ったものじゃない。裸眼の銀色の瞳だ。嬢ちゃんも価値が高いのは見ればわかるだろう?」

「そうね、かなり綺麗ね。よし、これにするわ!いいわよね、蓮?」
 そう言って、幸味夜さんは満足そうに笑った。

「はい!」

 僕は迷いもなく同意した。誰かにものを本気で選んでもらったことなんて一度もなかったから、ただ、選んでもらえただけで幸せだった。

「よし、じゃあ、早速移植しちまおうか!!」
 そう言うと、商人は店の奥に入っていった。この商人はどうやら医者も兼ねているようで、瞳を買ってくれた人は、すぐに治療費も割引で店の奥で移植してくれるらしい。幸味夜さんがついていったのを見て、僕も慌てて、店の奥に入っていった。するとそこは、壁や床、それにベッドですらも真っ白な不思議な部屋だった。