――誰かに守るといわれる日が来るなんて、思いもしなかった。それだけで、僕は、幸せだとさえ思った。この人についてきて、本当によかった。僕はやっと、誰かに助けてもらえたんだ……。
「あのっ……」
「うん?」
「……何で、僕がモノクロームだってわかったんですか」
彼女の胸から離れると、涙を拭いながら、僕は言った。
「ああ、そんなこと。君が、私の髪に驚かなかったからかなー。この髪、君には真っ白に見えてるんだろうけど、結構インパクト強い色してるんだよ? なんてったって金色だからね。メッシュもあるし。大抵の人はすぐにそれに気づいて私に驚いた顔を向けるのに、君は私の髪色に気づきもしなかったんだもん。ちょっとショックだったよー? せっかくのチャームポイントなのに」
唇を尖らせて、不服そうに彼女は言う。
「……すみません」
「まっ、それで何でかって考えたら、君がモノクロームになってる可能性にいきついて、それが君を売る口実になったから、全然いいんだけどね?」
謝った僕を見ると、彼女はウィンクをして、僕をフォローするかのように、慌てて上機嫌にそう言い放った。
「他に質問はある?」
脚をクの字に曲げると、またそう言って、彼女は僕の顔を覗き込んだ。
「……えっと、なんでモノクロームの子供が売れるんですか」
「そんなの簡単。君のその瞳に宿った色彩感覚が珍しいからだよ」
僕の瞳を指さして、はっきりと彼女は告げた。
「この世界は、人の体の一部ならまだしも、人そのものの全てを差し出すなんて、かなり珍しい。買われたところで、殺されたり犯罪の手伝いをされたりだとか、そういう惨い扱いを受けると決まっているからね。そんな世界で、少なくとも普通の子供の数十倍は珍しいモノクロームの子供がまるごと商品として売り出されたら、みんな面白がって食いつくに決まってるでしょ? 他には?」



