長いまつげを際立たせる大きなキラキラした目で僕を見ながら、得意げに彼女は言った。
僕はふと、その彼女の顔に、見覚えがあることに気が付いた。
長いまつげ、真っ白に見えるロングストレートの髪。――彼女は、僕をあの商店街で一億で売ろうとした張本人だったのだ。
「なん……でっ!? 僕を買い戻したって、貴方には何の得にもならないのに!!」
僕は叫んだ。
売りに出そうとした子供をやっぱやめたって買い戻したって、何の得にもならない。それなのにどうして……。
「何、簡単なことだよ。私は声を掛けたその日から、君を引き取るつもりだったの。でも、君は見たところとてもそれに了承してくれるとは思えなかったから、あんなやり方をしたの。怖がらせて悪かったね」
頬杖を突き、もう片方の手で優雅に煙草を吸いながら、彼女は淡々と言い放った。
「さっ、急にこんなとこに連れてこられて混乱してるだろうから、色々質問に答えてあげるよ。まずは何が聞きたい?」
「じゃ、じゃあ、なんで僕を引き取ろうと思ってくれたんですか」
「……君が今にも死にそうな顔をしていたから。それだけよ」
「――‼ ……そんなこと、初めて言われました」
僕はその言葉に、思わず、ギュウっと胸が締め付けられた。
僕の瞳から、ポタポタと涙が零れ落ちた。
「もう大丈夫よ。君のことは、死んでも私が守るから」
彼女はそういって、僕をまるで幼い赤ん坊を抱えるみたいに、優しく抱きしめた。
「……はいっ!」
「うっ、うっ……」
俺は、生まれて初めて、嬉し泣きをしながら頷いた。



