僕が彼女に連れてこられたのは、何処かの街の商店街だった。
「よってらっしゃいみてらっしゃい! 両目十二万円だよ!!」
「足一本五万円だよー」
「なんと、こちらは両足まるごと、 五十万円でお売りするよー」
そこでは、人の体の一部が、商品として売られていた。手足、小麦色の皮膚、まつげ、髪の毛。とにかく、他にもたくさんの人の物が、敷物の上に、商品として置かれ、あたかも、それが当たり前のように売りに出されていた。それはまるで、八百屋さんなどで売っている野菜と同じように。
「フフ、怖い? そりゃあそうよね。こんな世界、大抵の人は見たことないもんね」
あまりに予想外の光景に言葉を失っている僕を見て、彼女はたおやかに笑った。
「こっ、子ども扱いしないでくれる? ……別に怖くないよ」
自分に言い聞かせるかのように、僕は言った。
――しっかりしろ。僕もこれから、ここの商品になるんだから。
「そっ? じゃあ早速、お手並み拝見といこうかな」
唾をのんで、僕は彼女に頷いた。
「さあさあ、よってらっしゃい見てらっしゃい! 今日は何と、レア中のレア! モノクロームの子供、一人限定、一億円でお売りするよー!!」
「ちょっ!?」
直後、彼女はそう、大きな声で叫んだ。
――億だって!? それに、何でモノクロームのことがバレてるんだ?
「あたしのものよ!!」
「いやっ、俺のものだ!!」
「何を言ってる! 僕の物に決まってるだろ!!」
「うっ!!!」
彼女の言葉に混乱していた矢先、数十人の男女に髪の毛や手足を一斉に引っ張られ、僕は、身体中に激痛が走った。



