楽園が、僕らを待っている。


【モノクローム 移植】
 僕は先生にスマフォを使用禁止だと言われてるのも無視して、インターネットでそう調べた。

【モノクロームは、移植で治ることがある。しかし、移植をしても、モノクロ―ムの症状が治らないこともある。ある研究によると、モノクロームになって一年以内に移植したものと、一年以上経ってから移植したものとでは、一年以内に移植した者の方が治る確率が高いのがわかっている。しかし、それも確実ではない。中には五年以上経ってから移植したにも関わらず、モノクロームの症状が回復した者もいる】

「……痛っ」
 そこまで読んだだけで目が痛くなって、僕は慌ててスマフォの電源を切った。
 また、女の声が聞こえてきた。

「でも、それしか方法がないなら仕方ないんじゃない?」 
 切り捨てるみたいに、そうはっきりと女は告げた。
「そうねー。本当に、早く良くなって欲しいわよねー。移植しても治らなかったら、本当に気
の毒だけどねー」
「でも、あの子病院来てからもう5年以上経ってるんでしょう? これであの研究通り治らなかったら、本当に報われないわよね」

 その言葉に、僕は心底ゾッとした。

 確かに、移植しても治らなかったら、いよいよ僕の人生は本当にお先真っ暗だ。永遠に色のないこの大して面白くもない世界で、父さんに人生を壊されたことを実感しながら生きていくくらいなら、今すぐにでも死んだ方がマシだ。

「ごほん!! 皆さん、そういうことはご本人の病室の前で言わないでもらえますか」
 その時、背後から、聞き覚えのある大きな声が聞こえた。

 何かと思ってドアの後ろから廊下を覗き込むと、戻って来た先生が、大人達に声をかけていた。