そんな私の努力が実を結んだかと言えば、残念ながらそうではない。彼と視線が合うことは一度してなかったからだ。

 そうこうしているうちに、バイトを始めて2ヶ月ほど経過し、ようやく少しだけバイトに慣れたという実感が沸いてきていた。

 客からイレギュラーな問い合わせがあっても慌てることはない。まだまだ一人で解決できるレベルではないけれども、少なくともこの場合は誰に聞けばいいというライフラインの確保ができたことが大きかった。

 彼のことは差し置いても、バイトが楽しくなっていた。

 そして、いいことは連鎖するらしい。

 一学期末のテストの成績は案外とよかった。受験をしていないから不安だったのだ。本当にこの学校で勉強についていけているのか。

 蓋を開ければ、学年238人中36番。予想以上の好成績に思わず感嘆の声を上げたほど。もちろん哲史にも見せて、褒めてもらった。

 形だけの父親とは言え、成績を褒めてもらうのは嬉しいし、何より懐かしい。本当の父親のことを思い出してしまって、少しウルルとしたのは私だけの秘密だ。