「怪我するから気をつけな」
「はい……」
その段になって、ようやくイケメンの服装に目がいった。
白地に青色のストライプのコックスーツにグレーのウエストエプロン。そして同じくグレーのハンチング帽。
この厨房のスタッフだ。そして彼の胸元のネームプレートには"田中"の文字。
そういえば面接の時、私と同姓同名のアルバイトがいると言っていた。だからこそ呼び方を変えないといけないだとか、タイムカードをどうしようかだとか桜木がのらりくらりと話を切り出して、打開先を私に求めてきたのだ。
彼がもう一人の――田中伊織ということか。
女性だと思い込んでいた。厨房のスタッフということは面接の時に聞いていたが、厨房に女性の姿がないものだから、滅多に顔を出さない人なんだと決めつけていた。
でも違った。男だった。しかもイケメンだ。私好みの。
何か話さなきゃ。同じ田中伊織として、根拠のない義務感のようなものもあったし、何より同じ名前だという、きっと彼にとっても思わぬ共通項を提示して、彼にも私のことを意識してくれたらという浅はかな考えもあった。
しかし、それも空振りに終わった。
「はい……」
その段になって、ようやくイケメンの服装に目がいった。
白地に青色のストライプのコックスーツにグレーのウエストエプロン。そして同じくグレーのハンチング帽。
この厨房のスタッフだ。そして彼の胸元のネームプレートには"田中"の文字。
そういえば面接の時、私と同姓同名のアルバイトがいると言っていた。だからこそ呼び方を変えないといけないだとか、タイムカードをどうしようかだとか桜木がのらりくらりと話を切り出して、打開先を私に求めてきたのだ。
彼がもう一人の――田中伊織ということか。
女性だと思い込んでいた。厨房のスタッフということは面接の時に聞いていたが、厨房に女性の姿がないものだから、滅多に顔を出さない人なんだと決めつけていた。
でも違った。男だった。しかもイケメンだ。私好みの。
何か話さなきゃ。同じ田中伊織として、根拠のない義務感のようなものもあったし、何より同じ名前だという、きっと彼にとっても思わぬ共通項を提示して、彼にも私のことを意識してくれたらという浅はかな考えもあった。
しかし、それも空振りに終わった。