「申し訳ありません!!」

 私は平謝りした。それに気づいた桜木が走り寄ってきて、客に謝罪しながらもテキパキと周囲に支持を出していく。おしぼりたくさん持ってきて。君、一旦、料理どかして。瞬く間にテーブルが拭かれ、元通りの状態に戻る。それでも桜木は女性客に頭を下げ、サービスにとサーモンのカルパッチョを女性客の前に置いた。

 お口に合えばいいのですが。

 そこまですれば客だって怒りはしない。むしろ機嫌をよくした女性客は私の肩をポンポンと叩いた。

「こぼれたのは水だし、乾いたら同じだから気にしなくていいからね」

 もう一度、申し訳ありませんでした、と謝罪した私は、焦ったのとホッとしたのとが入り混じり、思わず泣いてしまった。

 気にすることないよ。誰もが一度はやる失敗なんだから。先輩のホールスタッフにそう言われ、おまけに桜木に、少し休憩してきたらいいよと耳元で囁かれた私は、その言葉に甘えることにした。

 しばらくは更衣室のイスに座っていた。面接をしたあの部屋だ。部屋には誰もいない。窓一つなく、ロッカーに囲まれた空間はお世辞にも開放的とは言い難く、すぐに息苦しくなってしまった。