私は何をしているんだ。襲い来るジレンマ。矛先も見つけられず、ただただ悶々とする。

 マルゲリータの進捗だってそう。厨房に確認しにいっている間に、他のホールスタッフが入れ違いで運んでしまっている。

 一つ行動を起こしてはジレンマ、またすぐにジレンマ、ジレンマ、ジレンマ……その連続だ。

 バイトを始めて三日。そろそろ少しくらい慣れるかなと思いきや、そんな実感は微塵も感じられない。

 思いっきり肩を落としていると、慰めるためか桜木がすぐ横に立った。

「すいません。迷惑ばかりかけて」

 こういう時は頭を下げる以外に思いつかない。

「そんなことないよ。いおりんは呑み込みが早いと思うよ」

 一体どこがだよと突っ込みたくもなる。周囲はもっと優雅に、かつムダなく動けてるではないか。

 みじめになり過ぎて、トイレに行くふりをして、涙を拭った。拭っても拭っても涙は止まらず、ますますみじめにもなった。

 平日でさえそうなのだから、週末になるとしっちゃかめっちゃかにならないはずがない。店内を右往左往した私は完全にテンパってしまい、この日、初めて客に水をかけた。厳密にはテーブルに置こうとしたグラスを倒してしまい、流れ出た水がテーブルの縁から女性客のスカートを濡らしてしまったのだ。