「ホント? 後悔しない?」
「はい。しません」
「よかったぁ。実はもう一人はさ、名字で呼ぶのが定着してきてたんだ。だから、君の場合、名字以外の読み方にしなといけないなって思ってたところなんだよ、マジで。それで――」

 ――好きにしていいってことなんで、お言葉に甘えさせてもらうね。桜木は笑みを浮かべる。

「いおりんって呼んでもいい?」

 思わぬ飛び道具に笑ってしまいそうになる。面接中だ。笑ってはいけないと思い、必死に真顔を作る。

「……はい。大丈夫です」
「じゃあ、早速だけど明日からバイト入れるかな?」
「え? 採用なんですか?」

 採用前提とは言え、面接らしい面接はしていない。

「この店じゃ不満?」
「いえ、そうじゃなくて……まだ面接らしい質問をされてないように思ったので……」