普段からそうなのか、今日のために特別に設《しつら》えたのかは定かではないが、部屋の中央に机が置かれ、向かい合う形でパイプ椅子がニ脚設置されている。
「どうぞ」
男性に促されるままに椅子に座る。
「はじめまして。僕がこの店のオーナーの桜木です。店内で呼ぶ時はオーナーって呼ぶとお客様が身構えることがあるので、店長もしくは桜木さんって呼んでね」
「分かりました」
「で、履歴書は持ってきてくれた?」
「はい」
鞄から履歴書を出す。もちろん田中伊織の履歴書だ。過去の経歴はファイルに全て記載されている。それをただ書き写し、私の顔写真を貼っただけのものなので、オーナーに渡す時には少し手が震えた。
桜木は私の書いた履歴書に静かに目を落としていた。無言の時間が続き、一瞬、桜木が眉根を寄せたのを私は見逃さなかった。
「田中……伊織さん……なんだよね?」
「どうぞ」
男性に促されるままに椅子に座る。
「はじめまして。僕がこの店のオーナーの桜木です。店内で呼ぶ時はオーナーって呼ぶとお客様が身構えることがあるので、店長もしくは桜木さんって呼んでね」
「分かりました」
「で、履歴書は持ってきてくれた?」
「はい」
鞄から履歴書を出す。もちろん田中伊織の履歴書だ。過去の経歴はファイルに全て記載されている。それをただ書き写し、私の顔写真を貼っただけのものなので、オーナーに渡す時には少し手が震えた。
桜木は私の書いた履歴書に静かに目を落としていた。無言の時間が続き、一瞬、桜木が眉根を寄せたのを私は見逃さなかった。
「田中……伊織さん……なんだよね?」