「ひぃっ!!」

 恥ずかしいほどに狼狽え、背後に顔を向ければ、丁度、哲史くらいの年齢の男性が立っていた。パッチリした目ではあるものの、瞼《まぶた》が少し重たそうに見える。少しぽっちゃりとしていて、温和そうに見える。背は標準的か。

「田中さん……かな?」

 見た目より少し高い声。不釣り合いでちょっと笑いそうになる。

「あ……はい」
「面接をしに来てくれたんだよね?」

 ポカンとしてしまい、私は慌てて頭を下げた。

「本日は時間を頂き、ありがとうございます」
「あぁ、気にしないで。そんなに片意地を張ってるとね、疲れるでしょ? 僕もね、普段の田中さんがどんな子か見たいし」

 言ってる意味は分かるが、初対面のしかも面接の直前に、リラックスした態度なんて出せるはずがない。

 答えに窮していると、とにかくこっちに来てくれるかな? と厨房の奥の部屋に通された。

 壁にロッカーが並べられたその部屋はいかにも更衣室といった感じの部屋だった。