「すいません」
「それより、制服似合ってるね」
「大丈夫ですかね?」
「うん。どっから見てもちゃんとした高校生だよ」
「よかった」

 入学式は本当に緊張した。いつ誰から、お前、田中伊織じゃないだろ、と指摘されるんじゃないかと気が気でなかった。

 実際は何事もなく粛々と進み、式のあとはそれぞれのクラスに移動した。

 私のクラスは1年4組で、出席番号は28番。

 最初は番号順で席に着く。担任の挨拶から始まり、自己紹介タイムとへ続く。

 担任は吉田繁雄《よしだしげお》という30代中盤くらいの男性教諭だ。たぬき顔で一見したら優しそうな風貌の持ち主で――実際にしゃべり方も温和で――社会科の教師だと言う。まずまずとっつきやすそうな担任にホッとする。

 自己紹介は番号順に進み、やがて自分の番になると、慣れない田中伊織の名前に、つっかえそうになりながらも平静を装い、なんとか自己紹介を終えることができた。

 不審がっている生徒はいない。それが一番の救い。