封筒には手紙の他、通帳とカードと印鑑も同梱されていた。

 この通帳にバイト代が入り、不足金の一部が佐藤の懐に移される。2年半だ。2年半バイトを頑張れば、田中伊織のこれからの人生は私のものになる。

 もう一度手紙を読み直し、お守り代わりに折りたたんで財布に仕舞うことにした。

 財布は中学に入った時に母に買ってもらったものだ。落としても気づくようにと鈴もつけられている。別にブランドの財布じゃない。ビニール製のどちらかと言えば安っぽい空色の財布だが、思い出は詰まっている。

 本来ならあまりこういうのは使い続けない方がいいのだろうが、こればかりは私自身の意思では手放せない。 

 皺にならないように制服はハンガーにかけ、箱を片そうとした時に、箱の底に小さな箱があることに私は気づいた。

 国内の有名なキャリアのロゴ。スマホだとピンと来た。スマホの箱の中にはメモのような紙切れ。

 高校生の必須アイテムだろ、と走り書きの文字が嬉しくて視界が滲んだ。