「あの……」
「何?」
「しばらくは監視がつくって聞いたんですけど」

 もしかしたら監視とは哲司のことじゃないかと勘ぐっていた。

「監視? 聞いたことないな。単なる脅しじゃない? あまり軽はずみな行動はするなって。あんまり気にしない方がいいよ。生活が楽しくなくなるから」
「そうですね」

 哲司の軽い口調のおかげで私は今一度、気持ちを切り替えてファイルに目を落とすことができた。

 そうこうしているうちに、3月も中旬に差し掛かり、郵送で卒業証書が送られてきた。ファイルで名前を見ただけの学校の、しかもまだしっくりとこない田中伊織の名の卒業証書は、予想以上に心に響かなかくて、少し落ち込んだりもした。この証書をもって、義務教育が終わったのかと思うと、何だか不思議な気持ちにもなった。

 卒業証書が届いた数日後、今度は佐藤から荷物が届いた。

 かなり大きなダンボール箱だ。空けてみたら高校の制服が入っていた。

 中学までのセーラー服じゃない。グレーのチェック柄のスカートに、紺色のブレザー。ブレザーの下は白いシャツと紺色のリボン。学校指定の靴下まである。