ようやく納得した。裏の社会で人生が売買されているなんてことが、表の社会で明るみになったら、世の中が震撼する。これはその綻びを最小限で食い止めるための仕組みの一つなんだろう。

「また別人になっちゃうんですね?」

 哲史は苦笑した。

「いやね……。別人になるだけなら全然いいんだけど……」

 含みのある物言いに首を傾げ、その後の哲史の話には背筋が凍った。

 背負わさる未来は過酷の一言に尽きる。全国指名手配されている人間のものだったり、ヤクザから命を狙われている人物のものだったり。性別が合ってればいい。年代が合ってればいい。マッチングもほどほどに、とにもかくにも日の当たらない場所で生息し、一生逃げ続ける人生を突きつけられることになる。加え、この先ずっと別人の人生を歩むことも許されない。

 結局は、死ね――ということなのだろう。このシステムがつつがなく作用し続けられるための"浄化"というわけだ。

「お互い、そんなことにならないように頑張ろう」
「はい」

 そこでふと聞きたいことがあったのを思い出した。