5分ほど車を走らせ、佐藤が車を止めたのは、少し古びた二階建ての一軒家の前だった。

「入れ」

 佐藤に続いて、家の中に入る。玄関の鍵は開いていて、三和土で靴を脱いで進む。

 佐藤が向かった先は台所だ。男が一人、流し台の前に立ち、洗い物をしていた。

「おっさん、連れてきたぞ」

 呼ばれて男が振り返る。写真に写っていた男だ。

「いらっしゃい」

 にこやかな笑顔。むしろ写真よりも爽やかに感じる。

「嬢ちゃんの父親の哲史《てつし》さんだ」
「宜しくお願いします」

 ペコリとお辞儀をする。こちらこそと哲史も頭を下げた。

「年頃の娘の親だなんてちょっと緊張するなぁ」