「その男はゲイなんだ。女には興味がねぇ。だから嬢ちゃんの身は安全だ。俺が保障する」

 ゲイと暮らすのか。女装した男を想像した。対外的にはその男を父と呼ばなれけばならない。うまくいくはずなんてないのだ、という戸惑い。

「そんなに心配するな。ほら、写真だ」

 佐藤は一枚の写真を私の視線の先に差し出した。

 中年のそこそこ渋い男性が写っている。中年と聞いたので太っているかと思ったが、むしろスマートな部類に入る体型。白いシャツに紺色のネクタイ。ブラウンのスーツを見事に着こなしている。顎ひげも生やしてはいるが、ちゃんと整えていて、むしろ清潔感さえ漂わせていた。

 目を見張るほどのいい男というわけではないが、ちょっとした劇団の舞台俳優なら通用しそうだ。

「俺が選んだ男だ。問題ないだろ」
「……はい」

 私はうなずくしかなかった。